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「佐久間 勇助。
勇気で助けるって書いて『勇助』」
笑顔を崩さずに彼女……心さんは答える。
勇助!?
これで確定した。
「……同じだ」
間違いない。
あの夢と全く同じだ。
「え?」
俺の顔色が変わったのがわかったのか、心さんは首を傾げた。
「夢と同じ」
俺はボソリと呟く。
「夢?」
俺の断片的な言葉に心さんは眉毛を寄せた。
「実は……」
俺は夢の内容を心さんに伝える事にした。
心さんなら何か知っているかもしれない。
いや、多分知っているはずだ。
━━……
「そんな夢みたんだ」
俺が夢の話を終えた頃、心さんから笑顔が消えていた。
「これは俺の記憶なのかな?」
これが俺の記憶だったら何か凄く切ない。
自分の記憶なのに今は客観的にみれる。
変な気持ちだ。
「……ねぇ、お散歩行かない?」
心さんは誤魔化すように話を切り替えた。
まるでその事に触れてほしくないような感じだ。
「散歩?」
俺も深く追求せずに話を合わせる。
「天気いいし、先生に聞いてみるね」
そう言うと心さんはさっさと病室を後にした。
「…………」
心さんが去った後、暫し考えてみる。
記憶をなくす前の俺は一体何やっていたんだろう……。
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