君という女性。

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*** 医者から許可をもらってきた心さんが病室へと帰ってきた。 「さっきの話だけどさ……」 「いいじゃん。 焦って思い出さなくてもさ。 思い出は逃げていかないわ」 俺がさっきの話題に戻そうとすると、心さんは俺の言葉を割いて止めた。 「……そうだな」 あまり話題にしてほしくないみたいだから、俺は素直に相槌を打った。 今俺がどうのこうの言って、心さんを怒らせ見捨てられたら記憶もないし身も蓋もなくなる。 「勇助に見せたいものあるの」 心さんに手伝ってもらいながら俺は車椅子へと移った。 見せたいもの……? 「ん?」 俺は心さんの顔を見て首を傾げた。 「少し目を閉じててね」 悪戯っぽく笑うと心さんは俺の膝に膝かけをかけてくれた。 俺は言われるがままに目を閉じた。 目を閉じると車椅子が動き病室の外に出たのがわかった。 心さんは俺を何処に連れて行こうとしているのだろうか。
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