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お姉ちゃんへの好意は膨らむばかり。ふわふわとしててあったかくて、わたあめみたい
な可愛らしいものが僕の手の中と胸の中にある。それだけで僕は満足だと思う。お姉ちゃ
んが好き。これは事実だ。好意を持っているのは事実なら、受け入れなきゃ。ふわふわし
てて可愛いものだから、受け入れられると思う。でも受け入れない。受け入れたら一線を
越えてしまう。越えてはいけない一線を越えてしまいそう。僕には越えてはいけない一線
だ。越えることは許されない。僕もその一線を越えたくない。だって越えたらお姉ちゃん
がお姉ちゃんでいなくなる。僕の後ろの人も怖いけど、お姉ちゃんがお姉ちゃんでなくな
るのはもっと怖い。お姉ちゃんで照れてくれるお姉ちゃんがいなくなるのは寂しい。だか
ら僕は、僕はこの気持ちを伝えずにいようと思う。
数日が経った。一線は越えてない。越える気がなくなった。その原因は、僕の心が壊れ
たからだ。好きも嫌いも、わからなくなった。僕の後ろにいる人が、僕の心を壊した。好
きの気持ちで僕を押しつぶした。そして僕の心は壊れてしまった。嫌だった。好きも嫌い
も、生きる理由と死ぬ理由も全てが消え去った。僕の持っていたものが全て、消え去った。
それから僕は融解した心を見つめて考える。元々持っていたものの感触、感覚を。それ
らが融解して出来たものが心。今の僕の心。ドロドロとしてて形を保っていない、醜いこ
とこの上ない、その割に中が空っぽだった。いや違う、見た目が中身だ。ドロドロに融解
して中身なんて概念は存在しない。形を自分の手で保つので精一杯だ。
お姉ちゃんはいつものように笑ってくれる。照れてくれる。優しくしてくれる。でも僕
はもう言葉に気持ちを込めることなんてできない。ドロドロと醜い心を乗せたゲテモノな
んて誰が受け取るものか。当然誰も受け取らない。でも僕にはこれしか残っていない。だ
から僕は創りあげた。醜い心で作った醜い仮面。これで気持ちを悟られずに、込める必要
がない。でも相手には気持ちが乗ったものだと錯覚させられる。醜い仮面だ。
僕はその仮面で後ろの人と接し続けた。それがいけなかった。仮面は僕を取り込んでい
く。外すと何もない僕が露呈する。だから外せなかった。怖かったから。何もない僕を見
られるのが怖かったから。そんなことを考える頭がまだあったらしい。そんな見栄を張る
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