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吾が輩は犬である。名は既にない。
生まれ落ちた瞬間確かにいたはずの兄弟たちはとうの昔にちりじりとなり、運よく母の元に残ることのできた吾も訳も解らぬうちに引き離され、
気がつくと、固い鉛色の地面を踏みしめていた。
吾が輩が何をしたと言うのか。
餓えに苦しみ、暑さにもがき、寒さに凍え、得たものは孤独。一匹きりの寂しさと憎しみと。
しかし吾の孤独な人生が終わろうとした刻、ついに出逢ったのだ。
ああこれを運命と謂わずしてなんと例えよう。
吾が輩は犬である。
名はまだない。
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