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あまりこの状況への混乱はないようだ。
「しかし、どういう事なんだろうなこれは。『一歩踏み出した先は、見たこともないような場所でした』そんなことがあり得るのか?」
当然の疑問だろう。
考えてみれば、考えてみるほどにあり得ない現象だ。
「まともに考えてみるならーーーーー」
そういって、改めて、あたりをを見渡してみる。
一面に広がるのは、岩と低木。
ちょうど、スモールサイズのグレートウォールを想像してみれば分かりやすいだろう。
二人がいる地点は、山間の狭間に値するらしく、ここから先の点は見えない。
「ーーーーーそうね、睡眠薬なんぞで眠らされてたってのはどうかしら」
自分でも、この話はおそらくあり得ないだろうと確信していた。
第一、眠らされていたというならば、自分たちを運んできた何者かはどこに行ったというのだ。
「それこそあり得ない話だろ。どんな姿勢で運ばれて来たってんだよ、俺たちは」
案の定省吾に反論される。自分でもおかしい話だとは分かっていたとはいえ、こうもあっさりといった感じで論破されると、何となくいらつく。
「ーーーーじゃ、正解はなんだと思うの?」
我ながら、意地の悪い聞き方だと思う。
正解なんて分かりっこないのに。
「・・・・・・ん、そうだな。素直に、ここは元居たところとは別世界だってのはどうだ」
「ーーー呆れた。まともな意見なんて期待してなかったけど、これはいくら何でも予想の斜め上を行き過ぎよ」
その表情は、呆れたというのを通りこして、軽蔑のようなモノを浮かべてさえいた。
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