第二章

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ヒトは、常識の外の出来事を自らの考える範囲で常識に当てはめようとする。 そんなことを由季が知っていたかどうかは分からないが、彼女にとって、省吾の考えは突拍子も無さ過ぎたようだ。 「まあ、俺にはそうとしか思えないってだけだからな、気にするようなことでもないさ」 しかし、省吾は自分の意見に対して、何か絶対の自信があるらしい。その顔は余裕にあふれている。 「・・・・・・ま、今は持ってる情報が少なすぎる。何とも言えないわね」 今の状況は、xの一文字だけで全ての構文を理解しろといっているようなものだ。 余りに無謀。まずは、状況の証明に足る、=の何かを手に入れなければならない。 「じゃあ、とりあえず当面の目標を立てようか」 「それは簡単“今私たちが置かれている状況がなんなのか”まずはそれを理解するべきだと思うわ」 当然の帰結だろう。今なにが起こっているのかを理解できなにのであれば、歩き回って情報を手に入れなければ。 「手っ取り早いのは人を捜すことだよな。それだけで事足りるだろう」 「妥当なところね。問題は、日本語が通じるかどうか」 唯一の懸案事項はそれだ。ここが日本かどうかで変わる。 「私は一応、英、仏、伊、独あたりの言葉なら話せるけど」 「俺は日本語オンリー、こんなんなら授業もっと真面目に受けとくんだったかな」 「別にいいわ。私が話せりゃ問題ないし、それにあなたにそこまで期待はしてなかったしね」 そう言って、由季は岩山を上り始める。 と、一歩足をかけたところで止まってしまった。 「・・・・・・あなたが先に行って」 「いったいどうして」 「私はスカートなのよ!いいから先に行きなさい!」 背中を蹴られる。 いったいどうして、道行きが心配になりそうな展開であった。
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