迷い

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携帯に片耳を当てながら、浴槽場の電気スイッチを押した。 「いつまでお風呂入ってるの」 ピリッ、と寒気が一走り。 引き戸に寄りかかり、腕を組んでそう告げたのは、 仕事帰りの、お母さんだった。 厳しいあたしの、お母さん。 『どうしたの?知恵?もしもし?』 「あ、南ごめん、また後でかけ直す」 ピッ。 青ざめた顔で、あたしは瞳を泳がせた。 ドクン。 ――――怖い。 あの、薄氷でできたような、目。 「お母さん、何?」 「何じゃないでしょ。 友達と何時間電話してるの? 勉強の妨げになるでしょう?」
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