1.Speak To Me

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 道乃は、自分以外に誰もいない自宅にいるとき、弱く短くではあるが、不意に不思議な感覚になる。その男の様に、自分がすでにこの世の人物ではないと知らないみたいな。そういうこともあり、この話は道乃のお気に入りにはいることとなった。  その話を読み終わってから数分で、先程セットしたお風呂の湯が沸けたことを知らせるアラームが鳴った。寝巻と下着をタンスからだして、風呂場にむかう。シャワーで体を洗い、お風呂に入る。軽く掃除をしてから風呂場をでて、洗面所で歯を磨いて、洗顔をした。道乃はまだ化粧をしていないので、化粧落としをする必要はない。脱いだ制服を抱え、寝間着姿で自室に戻る。制服をハンガーに掛け、目立つ皺がないか点検した。  もう本を読むのには疲れたので、道乃は音楽を聴くことにした。適当にジャズピアノのコンピレーションをコンポで再生し、一時間くらいボケーと聴いた。再生が終わったところで道乃は、勉強机に置かれた電波時計を見た。液晶には11:47と表示されていた。もうこんな時間だ。寝付きの悪い彼女は、これくらいにベッドに入っても遅いくらいなのだ。コンポからCDを取り出し、ケースにしまう。忘れ物がないか、バッグの中身を点検した。  部屋の電気を消してからベッドに入る。窓から入ってくる外の明かりで、ぼんやりと部屋が見渡せるくらいだった。時折聞こえる、国道を走る車の音が聞こえるくらいで、家の中はシンとしていた。スマートフォンのアラームをセットして、枕元に置いてから目を閉じた。  今夜はうまく眠れるだろうか。
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