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日常的な生活を送っている人たちは、目覚ましのアラームまたは誰かの声によって目を覚まし、一日をスタートさせる。朝食をとり、身支度をし、学校なり職場なりに向かう。日中は与えられたことをこなし、授業や業務を終え、それぞれの自由な時間を過ごす。そして、スタートの準備としてアラームをセットするなどして、就寝する。
道乃皐月(みちのさつき)も、その日常的な生活を送っていた一人であった。道乃は学生で、真面目に登校し、授業や課題をこなしていた。放課後は書店などに行き、新刊のチェックや雑誌の立ち読みをするか、友人たちと商店街に赴く。家に帰り、本を読んだり、音楽を聴いたりして夜を楽しんでいた。休日も似たようなことをしていた。たまに遠出をして、渋谷などで買い物を楽しむ。
この様に、道乃の生活サイクルは平凡なものであり、何か不可思議なことや猟奇的なことが入り込む余地はあまりない。
しかし、日常と不可思議・猟奇的なこととの距離は、意外と近いものなのだと、道乃は後日気付く。いままでの、この16年半の人生の何処に原因があったのかはわからない。原因はないのかも知れない。いずれにしても、こうなったことは事実なのだ。道乃は今でも全てを受け入れられないでいるが、そう思えるようにまではなった。
きっかけは非常に些細なことで、道乃はほとんど気にとめてなかったが、やはり重大なことだったのだろう。そんな些細なことを偶然にも見落とさず、忘れてしまわずにいるからである。
それは、日常的であるはず、あるべきだった朝から始まった。
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