始動

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「…たのに、何もないわけ?ねぇ、聞いてる?」 「え?あ、悪い。ちょっと考え事してた」 つい昔のことを思い出してしまい、葵の話を全く聞いていなかった。 「んもう!和真なんてもう知らないからねーだ」 葵はそう言ってそっぽを向いてしまった。 こういう時の彼女の機嫌を直すには、謝るのが1番だということを俺は知っている。 「俺が悪かったよ、葵。助けてくれたこと、凄く感謝している。ありがとな」 「…馬鹿、言うの遅いのよ」 でも嬉しい。そう小さな声で呟いた葵は、何だか照れているようで俺も自然と笑みがこぼれた。 その時、チャイムが1日の終わりを告げた。
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