プロローグ

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時間もたっぷりあることだし、 とりあえずシャワーでも浴びてくるか。 そう思って浴室に向かおうとした時、俺はあることに気がついた。 ―――何だ、これは? 何気なく目をやった俺の左手首に、何やら怪しげな数字が浮かび上がっていた。 指で擦ってみたり、水で洗ってみたりといろいろと試してはみたが、数字は全く消えそうになかった。 どうやらこれは、俺の皮膚に完全に刻み込まれているらしい。 かなり不審には思ったが、今ここでいくら考えたところで、この数字の意味など分かるはずもないので、俺はとりあえずシャワーを浴びた。 浴び終えたあとには、あの数字のことなどすっかり忘れていた。 そして、俺が起こす前に自分で起きてくるなんて奇跡だ、と驚いている母に出発の挨拶をして学校へ向かった。 いつもと変わらない1日が始まると思っていた。 それが当たり前だと思っていた。 この時の俺は、知る由もなかった。 この世界には、″当たり前″なんて言葉は存在しないということを―――。
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