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ほっと胸を撫で下ろし、ふと隣を見ると葵が頬を膨らませこちらを睨んでいた。
そんな仕草も、葵がやると可愛かった。彼女の名は五十嵐葵(イガラシアオイ)。もうすぐ俺たちは、付き合って3年になる。
出会いは高校の入学式の日だった。
寝坊してしまい、全速力で自転車を漕いでいた俺は、少し前を同じ制服を着た女子生徒が走っているのを見つけた。
けれど、どうやら走るのが得意ではないらしく、どうみても間に合いそうになかった。
すぐ彼女に追いついた俺は、どうせ同じところに行くならと思い
「乗ってくか?」と声を掛けた。
突然話しかけられて驚いた様子の彼女は、肩で苦しそうに息をしながらも走るのはやめずに、二人乗りは駄目よ、と真顔で言った。
大きな瞳と、肩まで伸ばした栗色の髪がよく似合う綺麗な子だった。
「でも、間に合わないだろ?」
「…そ、そんなの分からないじゃない」
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