プロローグ

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 春の柔らかい風が宮殿の中庭に吹き込み、花弁を広げた花々を揺らした。芳しい香りが流れてきて、その香りを嗅ぐと、不思議と心が落ち着いた。  中庭の吹き抜けの天井から射し込む日の光が、葉を茂らせた木々を通して、無数の木漏れ日となって幻想的な風景を形づくる。  静かな中庭にはお母様と、お母様に手を引かれる私しか居なくて、ゆっくりと穏やかな刻が流れていた。
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