春川 桜

18/29
前へ
/149ページ
次へ
大事な部分を省略した為に、なんだか告白のように聞こえる。 「えっと、一緒にいてくれってことかな」僕が不安げに言う。 「そうです。といっても、ずっと一緒にという訳じゃありません。もちろん坂本さんでもプライバシーはあるでしょうし、その点は安心して下さい。」 所どころで彼女が毒舌に感じるのは、僕だけか。すごく下に見られている気がするんだが。 「要するに、私が頼んだときに一緒にいてくれればいいんです」 いまいち要領を得ないな。 「それに一体どんな意味があるんだ。そもそもなぜ僕なんだ」 「今はまだ、話すべきではないと思います。いずれ必ず説明しますんで、その時まで待っていてくれませんか」 言いにくい事情があるのだろう。それは理解した。だけど、あまりにも都合が良すぎる気もする。 「考えさせてくれないか。すぐには答えを出せないな」これは正直な気持ちだった。出会ったばかりの彼女を信用するのは難しい。 「分かりました。今日のところは失礼しますね。お忙しいところ時間を取って頂きありがとうございました」 そう言い残し春川さんは僕の帰り道とは逆の方向に歩きだした。
/149ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加