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『災難だったね。君が事故にあったのは、普段から危険だといわれていた横断歩道も無いようなところで、近くの学校なんかでは、結構問題になっていたらしいんだ。それにね、』少し間をおいて続けた言葉は、『相手は酒を飲んでいて、今は刑務所だよ。不運が重なった事故に巻き込まれたんだよ、ハルちゃんは。でも本当、目覚めてくれて良かった。』という、想像にもしなかった事態を表す言葉だった。
自ら選んだはずの死。しかし、それは、相手の過失による交通事故としか、周りに思われていなかった。
うまく言葉で言い表せない衝撃を受け、大きく見開かれているであろう目を先生からそらした。
その時、
『・・・はぁ、はぁはぁ』
急に息ができなくなった。
『ハルちゃん?!』慌てて立ち上がった先生は、私の背中をさすりながら、『ゆぅーっくり、息してみよっか。』と言ってから、自分も大きく、ゆっくりとした深呼吸を始めた。
それに合わせて、私も深呼吸をしようとするが、うまくできない。思わず首のあたりを手で押さえてしまう。
『大丈夫だよ。大丈夫。』何度も先生が繰り返す。
その声と、背中をさする温かさにつつまれながら、私は、意識を失った。
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