高校3年生の7月

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今考えると、何が嫌だったとかじゃなくて、なんとなく全てが嫌だった。 受験生という環境。 口先だけの教師。 表面上だけの友人。親友。 『ずぅっと、一緒だよ!』と、卒業を前にしてのありきたりなセリフにも。 そしてなにより、そんなことを考える自分が嫌だった。 そんなとき、テレビをつけると流れてくるのは、 自殺 自殺 自殺。 はるかに私よりも年下の子達が、いじめなどを原因に生きるのに疲れたといい、自ら死を選ぶ。 親はそれに対して、加害者や教師、学校に対しての不満をメディアに泣きながら訴える。 はたして、あなたの息子、娘が自殺をしたのは学校側だけの責任か、イジメの加害者だけの責任か。 あなたが自分の息子、娘に対して 『大好きだよ。』と、『生きていて良いんだよ』と、言ってあげれば、抱きしめてあげれば、何か変わっていたのではないかとテレビの中で、泣いている自殺者の親に対して『ふっ』と笑ってテレビを消す。 すると、黒くなったテレビに映るのは、泣いていた親ではなく、それを滑稽だと笑う、滑稽な、自分。 はたして、自分が死んだら。 誰か泣いてくれるのか。 誰が、泣いてくれるのか。 そう考えて、やめる。 考えて、やめる。 あの頃は、高校3年生の7月、夏が、受験が、本格化するという時、私はそんなことばかりを繰り返していた。
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