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自分も目をつむってみる。
疲れたのだろうか、小さくなった少年の数を数える声が車の走行音に隠れて聞こえなくなる。
まるで、この世に自分しかいないような感覚。
でも、自分一人だけだったら楽ってわけでもない。
自分が一番嫌なのだから。
疲れるんだから。
車が、通らなくなった。
少年はもう、数えるのをやめたのだろうか。
本当に音が聞こえなくなった。
何をしているのかと一人でクスッと笑い目を開ける。
少年が、まだ、いた。
もうすでに、隠れている仲間を探しに行っているだろうと思っていたからか、まだ、木に向かって立っている少年を見つけ、目がはなせなくなった。
『もーいいかぁぁい』
その時、風が頬をかすめた。
それを合図に、私は、後ろを振り向いて歩きだした。
こんなに軽快に歩いたのはいつぶりだろう。
笑えてきた。
笑ったのは、いつぶりだろう。
『もぉーいいよぉぉー』
と、後ろから聞こえてきた。
私は、『もぅ、いいやっ』
と、微笑みながら小さくつぶやき、車の前で、立ち止まった。
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