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「え……?」
「なん、だ……これ」
自分達を取り巻く光景の異質さに、蓮と啓介は慄然とさせられた。
黒。
暗闇とすら形容出来ない、墨のような漆黒。
その中に、2人と女性…3人の姿だけが、忽然と浮かび上がっている。
異様な景色だ。
光すら届かないような黒に満たされていながら、自分達だけが、鮮明に確認出来るのだから。
置かれた状況が、理解出来ない。
「警戒しなくて良い。
直ぐに切り替わる」
女性の言葉の通り、次の瞬間には視界が一転した。
白が基調のドーム型の室内。
壁は360度、全てがガラス質の透明な何かだ。
そこから覗ける景色は、無数の星空。
そして、曲線を描く…視界に飛び込む青く、そして鮮やかで巨大な何か。
球体だろうが、視界に収まり切らない。
蓮と啓介は吸い寄せられるように、壁際まで歩み寄る。
「……地球?」
「…いやいや、そんな、馬鹿な……」
自分達の住む惑星を、自分の目で見た事などない。
しかし、眼下に広がる光景は、そうとしか思えなかった。
「綺麗だね……」
「ああ。
信じられない……」
絹のように真っ白な雲海、その間から覗き、視界に飛び込む大海、そして、巨大なキャンバスを彩るような聡明な大地。
星々の瞬く宵闇に浮かび上がり主張する様は、あまりにも美しい。
壮大な光景に、魅せられる。
「どうかな?
外から見た景色は?」
女性が、腰に手を当て微笑を湛えていた。
ここでようやく、先程までの出来事を思い出す。
けれど、先行していた警戒心はどこかに吹っ飛んでいた。
常識外の状況に困惑し、戸惑っているというのが大きい。
「よく分かんないけど、凄い」
「訳分かんねぇけど、凄い」
蓮と啓介の反応にほくそ笑む女性。
と、彼らの近場の床から、椅子が競り上がって来る。
「まぁ座れ」
そう促すと、自分の近くに出てきた椅子に腰を下ろす。
2人もまた、女性に続いて着席した。
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