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避難民を先導する兵士達に随伴する事8時間余り。
日が傾き、空は夕暮れ模様を浸透させていく。
避難民達の疲労は著しく、流石に訓練された蒼の兵士達にも疲れが見えていた。
蓮と啓介も、徒歩での長い移動に少なからず疲弊している。
陽射しがそこまで強くなかったのが幸いだろう。
今は、日が沈む前に夜営の準備をし、休息に入っていた。
多くが悄然とする中、唯一平然としているのがラーヴェンキルシュ。
他の面々とは対称的に、汗1つ掻いていない。
彼女のポテンシャルが一体どれほどのものなのか、未だ推し測る事は出来なかった。
「ふぅ……
流石に疲れたね。
足痛い……」
「だな。
距離以前に道が悪い。
もう少し整備されてれば楽なのによ」
これまで歩いて来た道は、全て土を踏み固めただけの簡易なものだった。
それも凹凸や砂利が疎らに転がり、地面の固さも一定ではない。
舗装された道に慣れた2人には辛い所だ。
それでも、身体を動かすのには手慣れたもので、休日には方々を散策していた経緯もある。
現代人にしては、体力がある方だろう。
「この文明レベルには、些か酷な要求だな。
街中すら舗装されてる場所は少ない。
まぁ、されていても、石を並べ敷き詰めた程度のものだ。
荒い造りなら、地面の方が大分マシだろうよ」
ラーヴェンキルシュの物言いを受け、2人は苦い表情。
そうした生活環境の違いからも、現状として実感してしまう。
だがその差違に戸惑ってしまう胸中を、上手く誤魔化す事は出来なかった。
「う~ん、昔の人は大変だね……
ハッ!?
トイレとかお風呂ってどうなってんのかな?
嫌な予感するんだけど……」
「ふふ…それは見てのお楽しみだ。
まぁ、この時代に衛生面で過度に期待しない事だな」
「うわぁ、それは聞きたくなかった……」
項垂れる蓮に微笑を向けていたラーヴェンキルシュ。
その彼女が不意に、今居る夜営地奥の森を鋭く見据える。
「ん?
どうかしたのか?」
いぶかしむ啓介だが、そんな彼に、彼女は目線を変えぬまま返答する。
「休憩は終わりだ。
来るぞ」
「来るって…何が?」
「はっきりとは分からない。
だが…大きいぞ」
ラーヴェンキルシュの厳かな発言に、2人は表情を強張らせた。
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