力の有り様

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とはいえ、それではドラゴンの方が只では済まない。 なので蓮は、ドラゴンのスプラッターも避ける為に、樹木の断面を飛ばす過程でなるべく丸くなるように加工した。 それでも、打撃力の凄まじさは想像に難い。 何せ、体重が何十トンあるか分からないドラゴンが、数瞬とはいえ宙に浮き上がったのだから。 相手は自然界の捕食者だ。 相応の脅威を見せれば、本能的危機感から退いてくれるのではないかと考えての行動だった。 「ギ…ィ……ッ、グルァッ!!」 ゆるりと、緩慢に上体を起こし立ち上がるドラゴン。 樹木による打撃を受けた横腹を庇うように身を捩り、重い身体を脚部で支え、威嚇の咆哮と共に牙を剥き出しにする。 その様子から、明らかにダメージは通っていた。 が、退く気配がない。 その様相を前に、蓮は舌打ちし、ドラゴンの殺気みなぎる眼光を見据える。 「橘 蓮十郎。 ソイツにばかり時間は掛けられんぞ。  もう1体来た」 後方からの、ラーヴェンキルシュの諫言。 それには少なからず動揺した。 恐らく、倒す事は容易い。 だが、退かせるとなると、加減し続ける限り難しいだろう。 それがもう1体。 命を奪う事を知らない、強大な力を所有する蓮。 しかし強大であるからこそ、使用には躊躇いが生まれてしまう。 剣聖相手に魔眼の力を活用せず、徒手空拳で対峙した理由もそれだ。 難敵と対峙した場合、加減が難しくなる。 人間相手なら、まだ体術でカバー出来るが、今目の前に居る相手にそれは不可能だろう。 能力で難敵を相手にする事が、蓮には何より難しく思えた。
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