12人が本棚に入れています
本棚に追加
蓮が対峙するドラゴンと睨み合い、対応策を苦慮していた矢先、ラーヴェンキルシュの言葉通りにもう1体、最初の1体が姿を現した方角から出現した。
「ギュオアッ!!」
姿を晒したもう1体は、先の奴より僅かに細い。
が、凶悪さは引けを取らない様相をしている。
「……っ、こいつ……っ」
後に来たドラゴンは周囲を素早く観察し、蓮と対峙する方を見やる。
すると蓮を警戒していたドラゴンが、僅かに視線を返したような気がした。
「おい、こいつら……っ!」
「ああ。
意志疎通が出来てるな」
啓介の焦声にラーヴェンキルシュが平素に返したその時、2体のドラゴンが同時に動いた。
「っ!!」
蓮と対峙していたドラゴンはそのまま彼に猛然と迫り、もう1体が恐々と様子を窺っていた民衆へと、迷いなく強襲して行く。
悲鳴を上げ、民衆が逃げようとするも体格差が有りすぎる。
瞬く間に距離は縮まっていく。
「このっ!」
周囲に散乱する木片を支配して、礫の如く2体に飛ばす。
蓮を真っ向から襲おうとしていたドラゴンは、堪らず怯み後退するが、民衆に向かうドラゴンは、木片が身体に多少食い込んでもお構い無しに猛進していった。
「……っ!」
止まらない。
この程度では止められない。
今にも凶悪な爪が、牙が、力無い民衆に突き立てられようとしている。
焦りばかりが先行して、思考が定まらなかった。
「やめろぉォォ!!」
蓮には最早、沸き上がる焦燥感から来る制止の声を、吐き出す事しか出来なかった。
最初のコメントを投稿しよう!