レトロな音

気付かない振り

マンションのポストは、入れる所と受け取る所が、キッチリと分けられていました。

郵便物を受け取るには、エントランスからオートロックを解除し、ポスト受け取り口のある部屋に入ります。

逆に、ポストに入れるには、ポストの入れ口がズラ～ッと並んだ所に入るのみです。

つまり、入れ口から覗き込んだ私の目だけが、受け取り口を覗き込んだ持ち主に見えています。

手に持っているお財布は、見えません・・・。

親切が仇に？

「・・・怪しいと思われますが、お財布を拾いまして・・・。」

コノ状況を理解してもらうべく、ポストの向こうの目に向かってオドオド説明してみました。

「財布？」

「これです・・・。」

「あ、それ・・・。」

「あなたのでしょうか？」

「・・・ええ。どうも、ありがとうございます。」

「では、ここに入れますね。」

私は、ポストに入れようとした時、まさかの事態に気付いてしまいました。