気付かない振り

6/9
前へ
/481ページ
次へ
「・・・あの、実は、お詫びしないといけない事が・・・。」 小さい声でボソボソ。 「は?」 二つの目がイライラ? ごめんなさい…、状況説明苦手なのです。 「面倒なんで、一度こっちに来てもらえます?」 財布の持ち主に、エントランスに回るよう促され・・・。 ああ、どうしてこんなにお粗末な話になるんだろう・・・。 自己嫌悪しながら、エントランスに。 オートロックが解除され、大量の荷物を抱えた男性が立っていました。 この人が先ほどの方でしょうか? お財布を見せると、ニパっと笑顔になられました。 「え、本当に?もう見つからないって思ってた・・・。ありがとうございます!!」 30歳の男性は、嬉しそうです。 でも、持ち上げたお財布の裏側をクルリと裏返してみせると・・・。 …絶句ですね、はい。 「あの、こんな状態にしてしまってごめんなさい!!ポストに入れようと色々していたら、その・・・。」 「いいです・・・気にしないでください・・・。」 ああ、30歳男性のションボリする姿、不謹慎ながら可愛いです。 なかなか見れませんが、堪能はできません。 「あの、弁償します!!」 「いや、拾ってもらって、弁償っておかしいでしょう?」 「でも、これ、ハンドメイドだと思うし、すごく丁寧に作られているし、大切な物だと思います。それを、こんな無残な姿にして、『はい、そうですかぁ?』は、できません!!」 不器用ながら、自分でも色々手作りする私。 力説です。 力説し過ぎて、メガネがずれそうになりました。 しかも、お腹もなりました。 空腹限界点です。 まさか、聞こえて・・・?
/481ページ

最初のコメントを投稿しよう!

914人が本棚に入れています
本棚に追加