気付かない振り

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…恥ずかしぃ…。 初対面の男性に、お腹の音を聞かれ、躊躇いなく爆笑されております。 いや、25歳ともなればいろいろ経験もあり、大抵の恥はかいております。 でも、何だか、こののまま帰りたいです…。 「うわぁー、凄いね。久しぶりに爆笑した!」 目が悪い私は、仕事中はコンタクトです。 でも、今は、メガネです。 メガネは、度を弱めに作っています。 目から入る情報を減らす為に。 大爆笑中の男性、もしや、先ほどのスーツメガネのサラリーマンさんでしょうか? 私の職場には、男性が少なく、更にはスーツの方は居られません。 ジャージのみです。 遠い存在のスーツ姿の男性。 メガネじゃなかったら、緊張でこんな近距離ではお話できなかったかもしれません。 少しボヤける輪郭。 それでも、大爆笑中スーツメガネサラリーマンさんは、背も高く、真っ黒な髪で、素敵そうに見えます。 いや、あくまで、度弱めのメガネからの情報なので、情報がぼんやりですね…。 バサバサっとスーツメガネのサラリーマンさんが、両手に抱える荷物が落ちます。 笑い過ぎですね…。 荷物が多過ぎて、上手く拾えそうにないので、私が拾います。 「ありがとっ。」 ヤケに、フランクなお礼ですね。 「ごめん、エレベーターのボタン押すの手伝ってくれる?」 あまりの荷物に、エレベーターさえ呼べないって、どんだけポストに溜め込んでらっしゃったんでしょうか? 家族は、いないのかな?
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