温度

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うぅぅぅっ…。 ズボンのポケットっていうのは、ハードルが高くなりますね…。 でも、ここまで来たら、意識すると余計に恥ずかしい空気になります。 えいっと目を瞑りながら、右手の指先を入れました。 うわっ、体温感じます…。 ー思考停止ー 「もっと奥だよ?」 上から声がします。 顔を上げると、ニヤリと笑ったスーツメガネのサラリーマンさん。 ある意味、確信犯的な…。 私、1人ドキドキしているようです。 これも一つの辱めでしょうか? お財布のギズ、相当根に持ってらっしゃる? そう思うと、反省の思いから、逃げてはいけないと。 早く、この辱めから解放されて、きちんと謝罪しなくては…。 えいっと、さらに手を入れ、恐る恐る手を動かします。 慣れない状況に、少し手が震えてきました。 恐る恐る探ると、指先に何か硬い物が当たりました。 これかな? 引っ張り出してみると、体温で暖かくなった革のキーケース。 ホッとして…。 「開けて。」 ちょっと震える手で解錠し、ドアノブに手を掛けて、グッと引いて開けます。
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