捨て子

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神様。 今日も叶えてくれなかったね。 着いちゃったよ。 嫌だなぁ……入りたくない。 でも、ここしか帰る場所がないし。 意を決してドアノブに手をかけた。 「た、…だいま…。」 ゆっくりと入って奥のリビングへと歩く。 ソファーにお母さんが座っていた。 でっぷりと太った体。 テレビを見ながらお菓子を口へ運んでいる。 会いたくない人ランキングがあったら間違いなくNo.1だ。 「………………ただいま。」 お母さんは興味無さげに振り返り、私を見るとまたテレビへと視線を戻した。 本当のお母さんはこんなじゃないといいなぁ…。 私の視線に気付いたのか、お母さんはもう一度振り返った。 「なにしてるの?早くご飯作りなさいよ。」 まだ食べるのかよ!   その言葉を飲み込み、私は「はい」と返事を返す。 一応この人に食べさせて貰ってるんだ。 それに、文句の1つが一週間ご飯抜きになりかねない。 「そこホコリ溜まってる。」 「洗濯は?」 「お菓子きれたわよ。」 今日は注文が多いな……。 座る暇もくれない。 なんでだろ……… あぁ…そっか。 私は自分が着ているものが体操着という事に気付いた。 今日がマラソン大会だったと 疲れていると知ってるからか…………。
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