kiss 3 [愛しの我が君]

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「佐藤?」 気がつくと、小栗が私の目の前に居た。 ふし目がちに、俯き、 「ごめん」と謝ってきた。 いまさら、何で謝る?? ハッと自分の異変に気づいた。 顎を伝い雫が零れ落ちている。 やだ.....泣いてたの?私! 小栗の前で最悪なんですけど! 慌てて指先で、涙を拭おうとした。 其の手を小栗が掴む。 「な....なに?」 小栗の真剣な眼差しに、思わず怯んだ。 ゆっくりと小栗の唇が開く。 「泣かせたお詫び。させて」 お詫び? 謝罪って? 土下座でしょうか?? 小栗の顔が徐々に距離を縮めて近づいてきた。 鼻先が触れ合いそうなほどの眼前に小栗の顔がある。 ちょ。....まって......。 私の頬を流れ落ちた涙の痕を消すように、頬に小栗の唇が触れた。 そして、唇が離れた瞬間。 氷の結晶のように、儚く消えていった。 ハラハラと舞い落ちる雪の欠片みたいなキスを繰り返す小栗。 ほんの少し唇の感触が冷たいのは、さっき飲んだビールが、まだ肌の熱を奪ったままでいるからで、 そして私の唇も小栗と負けず劣らず、ひんやりと冷えているのだろう。 ねえ。レーナ。 これって。 キスフレなのかな?
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