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kiss 4 [恋と、友情と、]
「ええ~皆様ぁ。おはよぉ~ございますぅ。
本日の朝礼はぁ、不在の四方山部長に代わりぃ、課長の辻田が一言ぉ......」
背後でアクビを炸裂しそうになった小栗に向け、肘撃ちを仕掛けた。
無言で空気を飲み込んだ小栗の前で、素知らぬ顔をして課長のありがたーーい今日の一言に耳を傾けていた。
四方山部長のワンポイント的な活力みなぎる、お言葉とは程遠く。
眠気を誘うワンテンポ調に瞼が重く圧し掛かる。
あ~~。寝る....
既に....寝.......
..ギャ!!
突然、膝裏に足を入れられ、
ガクッと膝を折り、よろめいた勢いで隣に並んでいた新人男子の大野君にしがみついてしまった。
「ご、ごめんなさい」
かなりビックリした顔をされ。
苦笑いを浮かべる大野君。
「いえ、気にしないでください」
ヤバ。
後輩に気を使われてる。
そして仕掛けたのは、
背後で、辻田課長の熱弁に賛同し頷くフリをする小栗。
ホント朝から、むかつくんですけど。
そして定時。
既に赤札ついて、小栗は退社。
消えていない社内のホワイトボードには、
「アールシー・ジャパン本社→直帰」の文字。
ということは、先方の会社に乗り込んだ後、
そのまま四方山部長と、夜の接待へと向かったわけだ。
まあ、いつものことである。
パソコンの電源を落とし、
ちらほら残る営業部の新鋭たちにご挨拶。
「お先に失礼致しま~す」
「舞ちゃん、おつかれ~~」
「おつーー」
「お疲れ様です!!」
席から立ち上がり、深々とお辞儀をしたのは大野君。
君は、真面目でよろしい!
そして君も、あと数年したら小栗と同じように
営業マン特有の多重人格の皮肉屋へと、変化するのだろう。
ああ、そのまま純なままで居て欲しい........
そんな願望を抱きつつ、女子会へと向かう。
社内の広々とした化粧室で、夜メイクに替えて、ほんの少しだけ香水をプラスする。
女子会なのだが、本日はゲストが来るらしい。
いつも以上に、グロスをたっぷりつけるのも、
マスカラを、丁寧に塗るのも、
ちょっと浮き足立っているからだ。
ゲストとは、すなわち男子!!
どんな男子がやってくるのだろう........
ああ楽しみ!!
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