L 伝説の絵本

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  「アルテ姉さん。 さっきからぶつくさ言っているけど、誰に自己紹介しているの?」 ――ドキリ。 突然 耳元で囁かれた声。 隣には、絵本を覗き込んでいる双子の妹のアポロが居た。 ――いつからいたんでしょうか? キノコ型のチョコレートに手を伸ばして、パクついている。 僕の大好きなチョコなんだから全部食べないでね――と心の中で思う。 「あっ、ごめんごめん。 説明に夢中になっちゃって」 「ん? 何の説明?」 ――僕が思ったことを不思議に思っているアポロ。 これ以上話をややこしくするのも 僕が疲れるし…… 話題を変えて、アポロにも絵本の解読を依頼してみることにした。 「アポロ、この絵本見てくれる?」 そう言って『崖の上のポーちゃん』を見せてあげる。 「姉さん 本好きだよね~」 そう言って、アポロもまんざらではなさそうに覗き込んでくる。 僕に言わせると、妹アポロは絵は好きだが 字が多い本は嫌いな類だ。 双子の僕たち。 みんなから言わせると 本質的な部分は似ているらしいのだが、僕は 至って逆のセンスを持っている双子だと思う。 「あっ、これは……桜? 何処かでみたことがある」 「だよね~。 何処だっけ?」 アポロも何か気付いたようだ。 二人で一緒になって、必死に記憶を遡る。 「僕と姉さんと、お父さんとお母さん――が居た。 それにもう一匹……」 ――もう一匹!? アポロが言った言葉に、少しずつ覚醒して行く 過去の記憶達。 「「クーちゃんだ」」 お互いのインスピレーションがマッチして、ハモった声が部屋に響いた。  
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