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L ダイブ
―――>アルテ視点
―――≫『紫桜』がある高台の上空2000m付近。
「お嬢ちゃん。 絶対手を放しちゃいけねぇゼ」
低く濁った声が聞こえた。
僕の左腕を掴んでいたのは、がっしりとした体格の旅人マークの右手だ。
『手を放しちゃいけない――』だなんて。
殿方から言われたら、照れるじゃないですか。
現状を打破しようとして、迫りくる地面をにらむマークさん。
濃い系の顔は好みではないけれど、真剣な彼の瞳に 少しだけドキッとした。
乱暴で不器用な言葉達。
か弱い女子は、手を引かれたがるものなのです。
彼の体格からしたら、僕の体は小さくて華奢だろう。
それを包み込んでくれる温もりをしっかりと感じていた。
――突然起こった出来事。
耳を打つ風の音。
全身に感じる風圧。
ものすごい速さで落下する僕たち。
高度2000メートルくらいかな?
落下速度は、200キロを越しているだろうか?
自由落下の法則からすると――
――頭の中で行われる計算。
後、30秒前後で地面に激突してしまうだろう。
数秒前まで――
大きな鳥さんの足に捕らわれて、呑気に空を散歩していたんだ。
鳥さんも親切ですよね。
僕たちを捉えていた足の指を大きく開いて、空中に僕らを解放してくれたんだ。
さてっ。
どうしようか――。
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