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―――≫双子の城 月の間
グリーク 国にある『双子の城』。
――僕の家だ。
ここ『月の間』は、僕の部屋の直ぐ隣にあって、客間として使っている。
夕食を済ませた僕。
月の欠片から出来たテーブルに、白ワインを入れたグラスを置く。
雪月熊の皮で出来た一人掛けのソファに座ると、全身が雲に包まれるような 優しい感触が 僕の体を覆い込む。
キノコの形をしたチョコレートの傘の部分を口に咥えながら、『崖の上のポーちゃん』を取り出して『紫桜』が出て来るページを開いた。
色彩豊かでカラフルな色使い。
その名の通り、紫色の花を咲かせた桜が描かれていた。
緑色の草原に囲まれていて、鋭く高く伸びた崖の上に立った一本の桜。
口の中に広がるチョコレートの甘い味と一緒に、僕の頭の中にある記憶が蘇った。
――あれは、いつの頃の記憶だったっけ?
実は、その桜を現実に見たことがあるんだ。
お父様、お母様。
そして、双子の妹のアポロと一緒に見た紫色の桜。
日に何度か 紫色からピンク色に。
ピンク色から紫色に。
花が咲き乱れるように 一斉に変化して行く様は 圧巻だったと思う。
『崖の上のポーちゃん』の物語も同様の記述がされていた。
絵本の作者の名前は 削られているように風化している為に読めなかった。
きっと、同じ桜を見たんだと思う。
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