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「それよりも、どうしよう晩御飯……。午前中まではちゃんと覚えてて、スーパーにも行こうって決めてたのに、引越し見てたり、再放送のドラマ見てたらすっかり忘れちゃってた……」
リビングの入り口で狼狽える椿を余所に、僕は冷蔵庫を開けて何か食べれそうなものはないか物色する。冷蔵庫の中は空っぽで、ドレッシングとかお味噌とかそういうものしか残っていなかった。
「何か簡単に作れるものはないの?」
冷蔵庫を閉じながら椿に尋ねる。
「ないと思う。まだ調味料くらいしか買ってないし」
たしかに、キッチンの周りを見ても『〇〇の素』みたいなご飯に混ぜれば出来上がり的なものもないようだ。僕は一日くらい食べなくても平気だけど、それに椿を付き合わせるのはさすがに悪い。
「コンビニで済ませようか」
今からご飯炊いても時間かかるだろうし、コンビニで出来合いの物を買った方が早くて楽だろう。
「うん。ごめんね、お姉ちゃん」
「別に謝ることないよ」
バッグから携帯電話と財布を取り出し、シュンとしている椿の隣で背伸びして頭を撫でた。
「よしよし」
昔一緒にいた時にも、こうして椿の頭を撫でて機嫌をとってたなあ……。幼い頃を思い出して、少し感慨深くなる。
「……お姉ちゃん。わたしもう高校生なんだけど」
「椿が何歳になろうが、僕の妹なんだからいいんだよ」
「……うん」
少し恥ずかしそうに頬を赤くして椿は頷いた。
「さ、じゃあコンビニいこうか」
「うんっ」
僕の言葉に、椿は元気よく返事した。
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