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「もうこんな時間だ」
椿と一緒に残っていたダンボールを片付けてリビングに戻った時には、時計の短針は18時を回っていた。
「あー!」
僕に続いてリビングに入った椿が突然大きな声を上げた。
「ど、どうしたの突然……?」
真後ろで声を上げられた僕はびっくりして体を震わせ、振り返った。
「晩御飯作るの忘れてた……」
なんだ、そんなことか。ガクッと肩を落とす椿に対してほっとする僕。と同時にふと気になったことを聞いてみた。
「椿って料理できるんだ」
「うん。家にいた頃は叔母さんの手伝いしてたし、今は料理部に入ってるから」
「へぇー、凄いね。僕なんてずっと寮だったから料理なんて家庭科の授業でしか作ったことないよ」
「そういえばお姉ちゃんが通ってた桜花は全寮制だっけ?」
「そうそう。中等部も高等部も全寮制」
桜花とは、制式には『私立桜花女学院』というお金持ちの女の子が通うことで有名な学校だ。偏差値もそこそこ高く、なにより停学、退学、留年する人が非常に少ないので評判もいい。僕が中学2年から最近まで通っていた学校だ。
「寮だと自分用のキッチンがないから、気軽に料理もできなさそうだね」
「そ、そうだね」
……まあ、あったとしても、寮にはちゃんと食堂があったから、自分で料理なんてやってなかったと思うけど。
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