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◇◆◇◆
「ふぅ……」
バス停のベンチに座りながら一息吐き、 バッグから取り出した手鏡で自分の顔を映した。
あーぁ……。
お風呂上りのように頬が赤くなっていた。これは今日の夜は濡れタオル必須かもしれない。そう他人事のように考える。
ふと、僕は腕を伸ばして、携帯するには大きめな手鏡で出来る限り全身を映す。そこにはベンチに座ってこちらを見る、白いワンピースを着た女の子がいた。腰の辺りまであるストレートロングの黒い髪と、小さな顔に大きな目。白い肌に華奢な体。そして少しだけ自己主張する胸。
表情というものを僅かに浮かべて僕を見返す、この女の子が僕。六年前にこの体になってから見慣れた、今の僕の姿だ。
その姿はたまに中学生と間違われるほどの小柄で未だ発展途上。とくに身長に至っては予想を大きく下回り伸び悩んでいる。バレーボール選手のように、とはいかないまでも、せめて高校生に見られるくらいにはなりたかった。高校に入学して1年と数ヶ月。一番の悩みは変わらずこれだ。
はあ……と大きなため息をついてから、頭を数回振った。今は身長のことを悩んでる場合じゃなかった。手鏡をバッグに戻してから腕時計で今の時間を確認し、バス停の時刻表を見た。
「えーっと…」
時刻表に人差し指を当てて、なぞっていく。ちょうどよかった。あと5分ほどで目的地を経由するバスがくるみたいだ。
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