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屋上。
俺はここが好きだ。
常にてっぺんを目指す俺には、この学校で最も高いこの場所が良く似合う。
特に今日みたいな風が強い日は、こうして雲の流れを見ているだけでも飽きることがない。
まだ肌寒いながらも、頬を撫でる風は心地良く、日頃の疲れを文字通り吹き飛ばしてくれるような気がする。
「このまま、風に乗って空を飛んでいけたらいいのにな……」
呟く。
目を閉じる。
我慢しきれず、俺は吹き出した。
何をロマンチストに目覚めようとしているんだ、俺は。
俺はそうじゃないだろう。
ほら、聴こえてきた。
足音だ。
俺が俺らしくあるためには、聴くのは風の声なんかじゃなく、この足音だ。
俺の好敵手、須藤京介の足音だ。
「おい、そこの鳥頭。お前は一体そこで何をやっているんだ?」
つい口元が綻ぶ。
「笑ってないで答えろ。大鳥翔吾」
俺は手にしていたライターで導火線に点火し、それらを足元に置いてから、須藤に向けて腕を広げて見せた。
「見ての通りだ!立ち入り禁止の屋上で、去年の夏使い残した五十連発打ち上げ花火をバックグラウンドミュージックにして、明後日の方向を見つめながら風を感じているところだ!何か悪いか、生徒会長様よぉ!」
「悪いに決まってんだろうが、この脳味噌虹色野郎」
「へえ、悪いのか。何が?どこらへんが?少なくともお前より頭は良いぞ?」
「聞きたいか?なら教えてやろう」
須藤は腰に手を当てる。
生徒会執行部と書かれた真紅の腕章が輝きを放つ。
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