わたし――宇宙人なの

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 会話はほとんどない。それでも家族で食事を共にするのはわけがある。父母がいないのは二人とも東京に出ているため。  このパン屋が続けられるのも父母が頑張って働いて稼いでいるからだ。子どもを悲しませないためにも祖父は家族でテーブルを囲むことにしている。と言っても六人家族うち三人しかいないので共に食事をするのは当たり前になってきているが、誰もこのことには触れない。詩織ですら両親が頑張っていることに気付いているのかもしれない。  朝食が終わると学校の準備をする。制服を着てリュックを背負う。詩織が先に家を出てその後に俺が出て行く。戸締りをしっかりすると一階の店先で開店の準備をする祖父に声をかけてから自転車に跨り学校へと自転車を走らせた。  俺の住んでいる木乃壁市は田舎とも都会ともとれない中途半端な発展をしており、駅前だけが栄えている一方、駅から離れるほどに田んぼや畑が目立ち、田舎のような風景が出迎えてくれ、中途半端な町となっている。  それでも東京へは電車一本でいけるし、千葉や神奈川の南関東、茨城や栃木や群馬などの北関東にもレールが走っているので交通の便ではわりと便利である。  そんな町を自転車で三十分ほど駆けると見えてくるのが、俺の通っている県立木乃壁高校。創立七十年を誇る、これまた微妙な年数を持つ学校だ。  俺の在籍する二年二組の教室に着く。まだ生徒の姿は疎らだった。
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