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「お隣サンて、君だったのか」
寒さで鼻の頭を赤くしたラスカは、次室の洋服掛けにコートを掛けると、玄関に置いた買い物袋をキッチンへ運んだ。
「知り合いかい?」
「男の子にはジャーンの飛行艇で会った事があるわ。女の子とは今が初めて」
ラスカ・ラスカは買い物袋から酒の瓶を出し、リンゴを出し、緑色の野菜を出し。
「誰?」
シオンはアズに顔を近付けた。
「ラスカ・ラスカ。軍の監察部の人で、気を付けなくちゃならない人だよ」
「監察部って何?」
「キランでは軍関係者の違法行為に警察は手を出せないらしいんだ。何て言うか、軍人を裁く軍人?」
ジャーンから簡単な説明を受けていたのだが、どこか怪しい。
「つまりはだな〈世界のワガママ〉以降、我が国では準非常事態宣言が出されたままだ。法律上、非常事態に於いては軍は法律や議会から独立できる。警察権に束縛されない軍の規律は軍自ら、即ち監察部が維持する」
「‥‥‥?」
アズ‥大丈夫かい?
「ヤナギ・アズ、タニグチ・シオン。私は日本語がイケる。読唇術はノーマルでも使えるのだから、ヒソヒソ話は口元を隠してすること。ナチュラルだけが人の心を読むとは限らない」
ラスカ・ラスカは買ってきたばかりのリンゴを、おろしがねを使って擦り始めている。
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