ヒゲ中将とラスカ・ラスカ

21/21

97人が本棚に入れています
本棚に追加
/300ページ
  トマス・カーカーは視線を少しだけ上に向けて考えた。 ランプの明かりは柔らかい。 「正面からお願いしてみたら?」 「キラン共和国の陸軍中将にですか? 取り巻きは、簡単にピストルをパンパン撃つんですよ‥‥」 アズも視線を上にした。 水力、地力、太陽熱。化石燃料に頼らない発電方法は様々であるが、それによって得られた電力は軍需産業と民間の工場、医療機関や鉄道に送られているから、市民の夜の灯りは、大抵が菜種油を用いたランプである。 「やっぱりそこかぁ~。トマスさん、ありがとう。明日、髭中将を訪ねてみますよ。中央広場に面したホテルの4階。正面突破ですよね」 トマス・カーカーは満足顔でまたまたまたまた酒を注ぎ〈ラスカ・ラスカには気を付けろ〉の狐顔の女は焼いた七面鳥を口に運ぶ。 そのラスカ・ラスカの左耳。 小さいイアーノウの緑色のランプが点滅する。 《ラスカ様》 《何だ?》 軍事回線のやや強めの思考波である。 強めの回線では、ノーマルでも言葉を返す事ができる。 当然、アズとシオンにもその声は聞こえているから、2人は聞き耳をたてる格好で動きを止める。 《通信、宜しいですか?》 《構わん、続けろ》 ラスカ・ラスカはアズの目をチラリと見て、七面鳥の一切れを口に入れた。 (聞いても良いのか?) アズは伸ばした体を引き、ラスカは目を閉じて、イアーノウからの次の言葉を待った。   
/300ページ

最初のコメントを投稿しよう!

97人が本棚に入れています
本棚に追加