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トマス・カーカーは視線を少しだけ上に向けて考えた。
ランプの明かりは柔らかい。
「正面からお願いしてみたら?」
「キラン共和国の陸軍中将にですか? 取り巻きは、簡単にピストルをパンパン撃つんですよ‥‥」
アズも視線を上にした。
水力、地力、太陽熱。化石燃料に頼らない発電方法は様々であるが、それによって得られた電力は軍需産業と民間の工場、医療機関や鉄道に送られているから、市民の夜の灯りは、大抵が菜種油を用いたランプである。
「やっぱりそこかぁ~。トマスさん、ありがとう。明日、髭中将を訪ねてみますよ。中央広場に面したホテルの4階。正面突破ですよね」
トマス・カーカーは満足顔でまたまたまたまた酒を注ぎ〈ラスカ・ラスカには気を付けろ〉の狐顔の女は焼いた七面鳥を口に運ぶ。
そのラスカ・ラスカの左耳。
小さいイアーノウの緑色のランプが点滅する。
《ラスカ様》
《何だ?》
軍事回線のやや強めの思考波である。
強めの回線では、ノーマルでも言葉を返す事ができる。
当然、アズとシオンにもその声は聞こえているから、2人は聞き耳をたてる格好で動きを止める。
《通信、宜しいですか?》
《構わん、続けろ》
ラスカ・ラスカはアズの目をチラリと見て、七面鳥の一切れを口に入れた。
(聞いても良いのか?)
アズは伸ばした体を引き、ラスカは目を閉じて、イアーノウからの次の言葉を待った。
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