逃亡のレプリカ

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  シオンはコクピットの後ろ、異能体と呼ばれる者の為のコアシートに腰を沈める。 アズはその前、オカルトの操縦桿があるパイロットシートに座る。 パイロットシートの右脇のボタンをアズが押して、イエロラのコクピットは煙に巻かれながら、オカルトの胴体に飲み込まれた。 機体に収納されたコクピットの前後左右のパネルが目を覚まして、7色の空間が出現する。 アズの右側のパネルが、エマージェンシーの文字を点滅させている。 「シオン、ブラッカだかオメガだか、かなり近い!」 緊急離陸の為にアズは慌てて右のパネル、左のパネルに指を触れているが、コアシートで目を閉じているシオンは冷静である。 「ダッホイに近付いて来るブレーンシップは2機。はい、私のラムダナイフ。落ち着いてちゃんとツールボックスに入れて」 「‥‥だね」 アズはシオンの差し出した灰色を受け取り、自分のそれと一緒に足元の工具箱へ入れた。 ストンコ・ウーの計算によると、工具箱のラムダは、オカルトの翼の内部に閉じ込められた第2物質アコーサの斥力を倍増させるらしい。 工具箱の蓋を閉じたアズは操縦桿を引いた。 右のパネルのエマージェンシーの文字は、更に明滅の速度をましている。  
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