逃亡のレプリカ

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  「ト、トマスさん、何故こんな所にいるんです?」 中央銀行の職員は軍の飛行母艦には乗らない。 「いや~、アズ君、シオンちゃん、君達の無鉄砲さには参った参った」 「‥‥」 怪訝そうな顔をしている2人に、ラスカは絞りたてのリンゴジュースの入ったコップを渡した。 コンコン。 またまたの来訪者は、アルミナ・ジャーンである。 「何だ、ギルネ中将も居たのか」 ウケでも狙ったのか、バナナの入った紙袋を抱えている。 「ギ、ギルネ中将?」 アズは心臓の高鳴りを静める為に、リンゴのジュースを口に含んだ。 「髭中将にヒゲがない」 シオンもリンゴのジュースを口に入れた。 「アズ君、ダッホイの街が戦場になる事を回避してくれたお礼だ。私の宝物をプレゼントしよう」 トマス‥‥いや、ギルネ・ザザはアズのベッドの脇に立つと、軍服の内ポケットから、金色の懐中時計を取り出した。 中将が差し出した金色。 (ヒゲ中将愛用の懐中時計‥) 「こ、これは‥‥」 アズは、それを手にする事に躊躇いを覚えた。 「これは‥」 「これは?」 「この懐中時計は、クロッカスにあげても良いですか? 何事も独り占めはいけないって爺ちゃんの教えなんです」 「ハッハッハ」 ヒゲの無い髭中将は笑った。  
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