ホランの森

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  「大佐、ハナマ大佐!」 若い下士官が廊下を進んで来る。 「何だよ、今、取り混み中!」 ハナマ・ハーは、そう言いつつも冷たい建物の廊下で立ち上がり、若い下士官の言葉を聞く姿勢をとった。 ハナマ・ハーという男、どこか頼りない感じではあるが、第12師団の特殊部隊〈ブラッカ〉に於ける地位は、それなりに高そうである。 「極東第2軍から、先日のダッホイ作戦への正式な問責がありました。書状はこれです」 下士官は何やら分厚い冊子をハナマ・ハーに渡したが、栗色の癖ッ毛はそれの最初の2、3ページをパラパラとめくっただけで口を横に捻り、問責書の冊子を廊下の出窓の一輪挿しの花瓶の横に置いた。 「こんな物、わざわざ僕の所へ持って来なくとも良い。ブラッカは逃亡したレプリカの回収作業をしただけだ。君等は、そういった内容の返答文を紙に書いて、僕はそれにサインをするだけ。何時も言ってるだろう? 12師団はそういった行動の出来る者の集まりでなければならない」 ふうん、なかなか。 下士官は敬礼をしてその場を去り、ハナマ・ハーは腰を曲げて鉄格子の中へ手を入れた。 「アルフレッド、鍵。昼食は食堂で摂るといいよ。けれども、食事が終わったら、ちゃんとこの部屋に戻るんだよ」 ハナマ・ハーは重そうな鍵を、金髪のオチビちゃんに渡した。  
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