ホランの森

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  食堂のある建物は、勿論高い針葉樹に囲まれていて、北の土地の淡い陽光は、その枝々に途切れ途切れとなって白木のテーブルに舞い降りている。 「アルフレッド、行儀が悪いわ。止しなさい!」 クロッカスの前に座っているアルフレッドは、左手でハンディーゲームを操作しながら、右手のフォークで皿の上の豆を突ついている。 「クロッカス違うんだなぁ~、食事の時間に現れて来るボスキャラの方が、行儀が悪いんだよ」 アルフレッドはゲーム機を離そうとはしない。 当然クロッカスは眉間に皺を寄せる事となり、ナイフを置いて右の手を伸ばし、アルフレッドの左手を強かに叩いた。 ピシッ! こんな暮らしを、この2人は長年続けて来た。 空賊の家に生まれたアルフレッド・ジャゲポーは、2歳の時に弱い斥力をクリルに導いた。 新物質の溶液に浸かる事なく、異能を使う。 アルフレッドの祖父ドン・ジャゲポーはそれが自慢で、空賊仲間の酒の席でそれを話した。 「此処だけの話だぞ、我が孫はクリルの溶液に浸かる事なく斥力を使う。奇跡のナチュラルかも知れん」 噂は人の間を伝わり、異能体を研究する極東の第12師団にまで届いた。 アルフレッド・ジャゲポーは、半ば強制的にホランの森に連れて来られた。 〈世界のワガママ〉から3年の後。世間がまだまだ不安定な時分である。  
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