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タタタタと、アズはオカルトのコクピットに掛けられたタラップを降りた。
タタタタと、ストンコ・ウーがそれを真似る。
「ねぇアズ、食堂へ行くなら付き合うよ。シオンちゃん居るんだろ?」
オカルトの翼が外に飛び出しているから、ドゴンゴの格納庫には粉雪混じりの寒風がビュンビュン吹き込んで来る。
アズは、紺色のツナギの上に着ているダウンジャケットに首をすくめた。
「食堂、開いてますかね?」
「開いてるだろう、2時前だし」
2人は鉄のタラップを上り居住区へ出た。
吹き抜けに沿って、剥かれたリンゴの皮の様な廊下がぐるぐると上に向かっている。
「けどさぁアズ、クロッカスだっけ? そんなに夢中で追い掛けちゃってどうするの? シオンちゃんにフラれちゃうぜ」
ドゴンゴの吹き抜けは何時もと同じ、家々のストーブで焚かれている薪の煙で満ちている。
「メカニック・ウーさん、僕とシオンはそんなんじゃ無いですから。それと‥‥」
アズはポケットに両手を突っ込んで、前屈みでスロープを登る。
「アズ、何度も言うようだが、僕はメカニックパイロットだから。まぁいい、それと何だい?」
「‥‥斥力は引力の反対でしょう?」
「何だよ、当たり前の話だろう」
「けれど‥‥」
「けれど?」
「ラムダ自体には、人を引き付ける力が有る様な気がして‥」
「───アズ、今日の昼飯、おごってやるよ」
シオンの働く食堂が見えて来た。
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