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キランは貧しい。
それは〈世界のワガママ〉の被害の多くがキラン領であったから。
大地が至るところでめくれる以前は、キランの版図はサフス領よりも広かったのだか、15年の間に土地の2割をサフスに侵食されている。
暮らしが貧しいからと言って、その土地の食事が不味いという事は無い。
アズはドゴンゴの食堂で出される、豆のスープが大好きである。
「アズ、最近の食欲、すごいわね」
シオンも一緒に昼食である。
「うん。オカルトって重いじゃない? けっこう体力を使うみたい」
まるで腕力で持ち上げているみたい。
「ラムダを使うのに体力要るんだ?」
「もちろんさ」
実際のところ、クロッカスを助けに行くと決めた時から、アズは体を鍛え始めた。
腕立て伏せ連続20回、腹筋連続20回が出来るまで頑張った。
「そういえば、頬が痩けてきたような‥‥」
「でしょう?」
まんざらでもないらしい。
シオンは自分が寝ている部屋の横で、アズが毎晩、数字を数えているのを知っているから、皿の上に2つ乗っている固めのバンの片方をアズの皿に移した。
「サンキュ」
アズが、それをくわえた時に思考波。
《アズ、聞こえて?》
「ああ、フラワー」
《ジャーン様が部屋に来るようにですって》
アルミナ・ジャーンの部屋はドゴンゴの最上部、操舵ブースのそのまた上である。
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