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C337輸送機。
サツマイモに似た胴体に、前後に並んだ直翼が付いている。
サフスのベネネイ。ローズマリーに主力の座を譲った機体であるが、小型軽量で運動性能も高く、サフスの星付きのパイロットは、今でもこの機を愛用している。
《ザ──ッ 民間の輸送隊だ。軍用機、確認しろ》
C337からの思考波。
「取り敢えず直進」
アズ号は通信を無視して3機の編隊の鼻先を掠める。
《繰り返す。此方は民間機だ》
言うものの、サツマイモの左右にいたベネネイはくるくると旋回して上下に分かれた。
「シオン、穏やかじゃない。2機のベネネイのパイロットはエース級だ」
アズは戦闘を覚悟して操縦桿を引いたが、シオンは冷静である。輸送機に説明を求めた。
《積み荷は物では無いでしょう? F体、小さな子供達を、こんな寒空の中どこへ連れていくの?》
《ザ──ッ 繰り返すが、当方は民間の輸送機だ、夜間の飛行許可は12師団に受理されている》
アズ号はベネネイの腕を警戒して上昇姿勢である。
それが不満なシオンはパイロットシートを強く蹴り、アズ号は慌てて急降下を始めた。
《胡散臭い人なんか大嫌いだから! 此方はアルミナ・ジャーン空挺団だから。積み荷の子供達は全員は頂くから!》
下降のGが働くアズ号のコクピットの中、シオンがまたまたパイロットシートを蹴った。
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