サトゥーマ・ゼアンネの声

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片翼のオカルトは、残された右の翼を上に向けて高度を上げる。 ブレーンシップに於いては、この場合この姿勢である。 「駄目だ! 子供達を乗せた輸送機がどんどん離れていっちゃう! シオン、ドローンのコントロールも僕がやる」 アズの感心は既に、オカルトが落ちる落ちないには無く、F体を乗せてサフスを目指しているであろうC337に移っていた。 2機のベネネイは、アズ号の左の翼をもぎ取るところまではいったが、いかんせん一線を退いた機体である。全ての弾丸を撃ち尽くしてもいた。 アズは、下を飛んでいるベネネイに的を絞ると、上を飛ぶベネネイに軽く機銃の弾を放ち操縦桿を倒した。 「アズ、落としちゃ駄目だから」 「分かってる! ブレーンシップを宙に浮かせているのは、コアシートのF体さ」 低空にいるベネネイのパイロットは、この状況の異常さに、今更ながら気付いたらしい。 普通のパイロットとF体では、これ程ボロボロになった機体は飛ばせない。 ベネネイのパイロットは、片翼のオカルトから逃れる為に、ギリギリの低い所を飛ぶ道を選んだ。 タイガの空には、クリル、アコーサ、ラムダ、異なる新物質の斥力が長い時間からまり続けている。パイロットの後ろに座るF体の精神力は、そろそろ限界のはずである。
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