サトゥーマ・ゼアンネの声

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「DD、HH、全部任せた。俺は第7大隊に合流するまで寝ている事にする」 左側の胴にドクロマークのオメガの第3シートでは、001AAがふてくされたまま目を閉じている。 その後ろ、第4シートに座る002JJはAAの態度を咎める事はせずに目の前のパネルを見続けていた。 オメガの2つの胴体を繋ぐ湾曲型の翼の先端に埋め込まれた、極少量のラムダ。 第2物質アコーサにより作られた〈レプリカ〉と呼ばれる緑色の髪の異能体が、複数人で斥力を捻り出す。 右側の胴体にいるDDとHHは無口な双子の兄妹である。 無口なままドクロマークを飛ばしている。 「おかしいわね。私達の他にも、この空域を目指して来る斥力があるわ」 目を閉じたAAのシートの後ろ、JJは何かを感じ取ったらしい。 「うるさいな、寝かせろよ!」 第3シートで目を閉じていたAAが身をよじる。 「いい加減にしなさいAA。私達が向かっている空にいるのは、ダッホイのオカルトだって事くらい感じているでしょう! 12師団はF体の密輸を全うする以外に、ナチュラルを手に入れたいのよ。無関心にも程がある」 そうしている間にも、彼等レプリカの脳裏には、既に洋上を飛行しているC337輸送機からの悲しいイメージが届いている。 そのイメージは彼等のイメージにリンクするから、より一層、不機嫌の度合いは増してくる。 「JJ、俺達は何者だ? 作られた異能体とは言え軍人だぜ。軍人が命ぜられた作戦に疑問を抱いてどうする? 基本中の基本だろ?」 子供達の悲しいイメージに、アズ号の疲れたイメージが混ざり始めた。 片翼のオカルトは近い。
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