東京へ

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タイガの夜から数日後、アズは、極東の不凍港で出港を待つ、貨物船の甲板に立っている。 紺色のツナギに黒のダウンジャケット。 何時もと変わらないアズである。 「何日位で着くかしら?」 アズの隣に立つシオンの褐色の髪は、西の山から吹いて来る風に素直に横に流されている。 「3日位じゃない?ここは落ち着いていくさ。翼も無くしちゃったことだし」 サフスタワーの完成の日、つまりはタイガの空戦の夜、キラン第2軍司令ギルネ・ザザは重い腰を上げた。 持てる空軍力のほぼ全てを用いて、第12師団の独走を諫めた。 国境近くまで飛んだC337輸送機は無事第2軍に接収され、引退を宣言したレプリカ達は、空戦の空へと向かっていたアルミナ・ジャーン空挺団とジャげポー空賊団に身柄を引き取られた。 「アズ、本当にイエロラは要らないのか?」 埠頭に立つアルミナ・ジャーンが叫んでいる。 「ジャーンさんありがとう!でも大丈夫です。2番機までもらったゃったら、空挺団に残るブレーンシップは1機だけになっちゃう」 ジャーン、ストンコ、ロマァ、ガジャラ、空挺団の面々の少し後ろにクロッカスとアルフレッドがいる。 出航の汽笛が鳴ると、アズは緑色の髪の少女へ、金色の懐中時計を投げた。 ギルネ・ザザからもらったそれは、北の港の朝陽にキラキラと輝いて、美しい放物線を描いた。
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