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「ヤナギ」
「何よ」
ロブロは胸のポケットから、赤い箱の煙草を取り出した。
パイロットスーツに忍ばせておくには、多少問題のある箱である。
「俺のローズマリーと交換で、今夜の宿を紹介してくれ」
少佐殿はマッチを擦り、淡い光が松林の風に揺れる。
「東の山を越えた所に集落がある。柳の表札は一軒だけで、僕のじいさんが寝ているから、頼って」
アズはそう言うと、マッチの炎を煙草に移そうとしているロブロ・ゼッタへ鍵を投げた。
単発の400CCの鍵である。
わざとタイミングの悪い時に投げたのであるが、少佐殿は落ち着いて煙草の煙を飲み込み、左手でマッチの火を消し、右手で鍵を掴んだ。
(何でこの人、あんなに易々とオカルトに落とされたんだろう?)
「この先、小川の脇の柿の木の所に僕のバイクがある。乗れる?」
ロブロは旨そうに煙草を吸う。
口から細い煙を吐く。
「これ。小さいけど勲章だから。しかも3個」
しつこいようだが、ロブロの右の胸には金色の星が3つ。
「俺だって一応エースさ。アンダースタンド?」
笑って言う。
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