東京へ

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アズは波に洗われる甲板に出ると、四方の海を見渡した。 貨物船は逃げているのだから、船尾の向こうに灰色の軍艦が見える。 「なんだ、型落ちの駆逐艦かぁ」 アズは艦橋を目指して、また駆けた。 「おい、お前! 危ないから船底に隠れていろ!」 貨物船のクルーが怒るのも無理はない。 こちらを追い掛ける軍艦は、既に威嚇射撃の体勢を整えている。 船首にある砲塔が、しっかりと此方の水面に、連装の砲口を向けている。 斥力を利用して進む斥力船である。 人類が新物質を見つけて、初めてそれを推力に使ったのが船。斥力船には50年の歴史があり、そのまた昔、帆船時代からの決まりを抱いて海に浮く。 斥力船だから、もちろん異能体が力を貸していて、その異能体を年季の入った斥力とアズは例えた。 どういう意味かしら? 「こら! 危ないと言っているだるろう!」 アズは走る事を止めない。 艦橋へ登る階段を踏んだ時には、ドカンドカンと駆逐艦の砲口が火を噴いた。 「そんな砲弾になんて、当たるもんかよ!」 船酔いなんて忘れちゃってる。
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